望んだあの時に

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  望んだあの時に  

見つかったら、もし見つかったなら。
見つけられたのなら。






遥か彼方で、今一人となって、ひとたび何も考えないように、と。
どこかで地に帰った一人の人のことを思い出した。
それは退屈しない思考だった。僕は切れ切れとなった布を握り締める。それが全てを表しているようで。
目が乾いていた。
瞬きもするのも惜しいほど、この砂漠の朝は美しいとでも言うのだろうか。
全てを奪う砂だと言うのに、そう思う心の奥で僕の心が痛む。
目だけではなかった。
考える事が何もないのだ。
目の前に広がるは、僕の卑小さを示してくれる、誇り高き広大な砂漠の色だ。
何もないその先に待つものを僕は捜し求めている。
もう、僕しかいない。
砂漠の流れ往く砂に遥か彼方に、地平線はあった。
日が昇るどこか分からないところ―だいたいそんな曖昧さ。
それでも、確かに存在するという、命を象徴するところのように見受けられる。星は回っていて、何もないところであるこの場所も生きていて。
そうして、生きているのだと思える。
実感する。そうして行く事が。


まだ何も見えない。蜃気楼でさえも。
いや、見えない、のだろうか。
許されたい。
僕をかばってくれた人。
僕を育ててくれた人。
僕が見殺しにしてしまった人。
僕を見ている神様―もしいるなら。

ただ、歩く僕。
望む事が、ただ一つあるのなら、僕は生きたいというだろう。
悲しいまでに、それは真実で、偽りのない僕自身なんだ。
僕の翡翠色の髪が目の前に霞むように覆った。
蒼い空も、僕の視界を横切るように霞む。
雲ひとつないその下を、通ってもいいですか、と僕は問おうかと思うほどに。

ただ、そう。歩くんだ。
死んだ人たちの分まで。
僕は、力を無くしていた。
光り輝いていた僕の先を覆うように、現実は次々と襲い掛かった。
僕のために死んでいく、それほどまでに小さい僕を。

僕は、見つけたかった。
僕の大切なものを。
確かめたかった。
僕の、大切な人を。

僕のこの髪、この瞳。
僕は、神に愛された子なんだそうだ。
どこに、どんな証があってかなんて知らない。
僕は、翡翠色の髪と瞳を持って生まれてきた。たったそれだけで。
父さんも母さんもいない。けれど、それだけで守ってくれる人たちがいた事は確かだった。
特別な力も何もないのに。そのために死んで。

―この砂漠を歩く事で、僕は。
償えるのだろうか。
僕のこの罪を。

僕の生まれた国があるなんて、本当なんだろうか。
大事な人とは、誰なんだろう。
どれくらい大切なんだろうか。

頬をつたう涙を拭いながら、進むしかなかった。
最後の僕の守り人から貰ったこの写真に映るこの人。
僕と同じ髪と瞳をもった人。
僕は、一体何なんだろうか。
愛されるってなんだろう。

神様なんてものに愛されなくてもいいから。
死なないで僕を愛してと、僕は思う。

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