I'm four

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  I'm four  

あ、と思うそんな一瞬だ。
何も見えない、と思ったそんなときだ。何かが見えてくる。
空が蒼い。空が遠ざかる。急速に吸い寄せられていく。
下は見えない。何も見えない。
私は、瞳を閉じていった。
力なく投げ出した私の身体は、突然広い世界に見つめられたかのようで。
世界が私に魅入られてきている、そんな錯覚が頭を過ぎった。
もう何もない。
けれど、だからこそ何もかもに勝てる気がした。







翻る私の腕。
ゆっくり刻む時の鼓動。
かざした手から、光が零れ落ちて恵みを与えていく。視界は全て、私の大好きな色をしている。
誰もが思う夢、一度は誰しも夢を持つ。
何時からか自由になること。
自由と言ったら、私には夢があった。誰もが見る夢、叶わない夢。実現不可能な夢、未来。
人間は無力だ、時に私はそう思う。
無力だからこそ、力を求めるものだと、私は思っていた。
何時だったのだろうか、
こんな時だったのに、私は穏やかだった。
こんな時なのに、心地よくもない風が吹き荒れている。ある時は、気づいたら涙をこぼしていた事もあった。
決して失いたくないもが、あの時と同じ、私の心に居場所を作っていた、私にとってかけがえのないものが奪われたときも。
あの時も、風が吹き荒れていた。今みたいに。
まるで、襲い掛かるように。
――私をきらいみたいに。

でも、私はきっといつか帰ってくる。
誰も決して叶わない事をやって、きっといつか此処に帰ってくる。
私の仲間たちは、その願いをかなえて、遠くに行ってしまった。
願いは、かなえる為にあるものだ、けれど。
私の願いは、叶えると同時に私と言うものの存在がなくなってしまうもの。

私の好きな色は青だった。
地球は青く、澄んでいる。誰にも見つからないように、私は今日聖なる青を見にまとい、此処にやってきた。
聖なる儀式を行うように、私は瞳を閉じる。
好き勝手に髪がなびく。望んでもいないのに、身を委ねているような錯覚に陥る。

『さあ、行きましょう』

鼓動は、穏やかだ。
私と言う存在も、ここにある。揺ぎ無いものとして。
憧憬が胸を過ぎる。
こんなときに思い出すものは、遠くに見える私の懐かしき故郷だった。
頬を、一筋。
そうか、こんな時も泣けるのか。
私も、1人の普通の人間だった。
それだけでいい。
――ゆっくりと、瞳を閉じた。
私には、もう何もない、そう、私の仲間も、私の中の情熱も、全部。
懐かしい、故郷の憧憬も。
そして、全て、閉じた。

私は、2度と取り戻せない、一歩を踏み出した。
下は、私の好きな大海原の母なる腕。
風が、止んだ。
私は、どんなになっても戻ってくる。きっと戻ってくる。
乗り越えて、やってくる。

私は、自由になるんだ。


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